第4回 女社長は添乗員  〜北海道興行の思い出〜
 

 カニにイクラにジャガイモ・ソフトクリーム… 観光気分いっぱいで北海道に向かったものの…… 集団行動が苦手なメンバーを引き連れての旅は受難続き。

 空港では、「みんなひとかたまりに集まっていて…」と口をすっぱくして言ってる矢先に、それぞれ蟻のようにワラワラと散らばっていく。いや蟻じゃない。蟻には秩序ってもんがある。彼らはお気楽なキリギリスだね。

 車イス軍団は全員、航空会社の用意してくれた車イスに乗り換えなければならいし、おまけに電動車イスはバッテリーを取り外し、解体する。種類によってやり方がちがうので、本人に説明してもらうんだけど… 振り返ると誰もいない。ああ…車イスにリモコンでもつけておけばよかった。

 なんとか手続きをすませ、早めに乗り込みはじめていたのに、あちこちにばらついたメンバーを集めてゲートを通過させると出発時間ぎりぎりになっていた。全員乗り込んだなと思っていると、後ろから聞き覚えのある脳天気な声が……。

 「藤原君はコーラがいい?僕は何にしようかな〜」マチズモ神山とアームボム藤原組が仲良くジュースの販売機の前でショッピング。「お前らー何やっとんじゃい!」と蹴り上げると「だって藤原くんの汗は尋常じゃないんですよ。機内サービスだけでは、とても水分補給が間に合いませんよ。それに飛行機って途中下車できないんですよ」と訴えるマチズモの横で、藤原が得意そうに「ハアーイ」とのたまう。

 こいつら水槽にでも入れて荷物と一緒に運んでもらえば良かった… と思いながらも、2人をあわててゲートに押し込むと職員が苦笑いしながら「最後のお客様がゲートを通過しました」とつぶやく。

 飛行機に乗り込みホッとしていると後ろの座席から、サンボ慎太郎が誰も聞いてないのに自分の旅行体験を大声で延々と話し続けている。

 隣の木崎華也子嬢は「お飲物はコーヒー・紅茶・オレンジジュース・ウーロン茶がございますが、何にいたしますか?」とにこやかにたずねるスチュワーデスに「リンゴジュースくだしゃい」と繰り返している。

 ああすばらしき旅のはじまり。北海道につく前にあたくしの血管は2・3本切れたね。

 ドッグレッグスの地方巡業は寿命が縮む…と思いながらも、いつかは海外巡業に行きたいという夢もあるの。このメンバーを引率して海外にいくと思うと気が遠くなるし、絶対誰か置いてきちゃうだろうと思う。それでもいいから一度は海外で障害者プロレスをやりたいなー。どなたか心あたりがあったらご連絡下さい。