第13回 映画化という名の妄想
 

 無敵のハンディキャップが出版された時、「絶対にベストセラーになって映画化の話がくる!」と勝手に思いこんでいました。しかし、現実はというと、あんなに面白い内容なのに、Vシネの企画すら出てきませんでした。不気味な生き物が登場して、おまけにメガネっ子(ちなみに私のことだけどね)がいるという点ではハリーポッターと同じようなものなのにどうしてなんだ!?

 それでも本が出た当時は、女社長として映画化に備えて、いろいろとキャスティングを考えていたのです。今となっては、かなりまぬけな話だけど、その頃はけっこう真剣にシミュレーションしていたので、今回はその幻のキャスティングを大公開しちゃいます。

 まず愛人とかミラクルヘビー級の選手は、本人の出演が難しければ全てCGかな。代表であるアンチテーゼ北島は、表情がなくて淡白な顔の内藤剛志あたりがいいけど、やや暴力の香りが足りない。やっぱり北島代表にはバイオレンスあんどデストロイが必要だ。そうなるとちょっとマイナーだけど白竜がいいね。

 主役のサンボ慎太郎と欲獣マグナム浪貝のキャスティングについては絶対の自信がある。まず、欲獣マグナム浪貝役には、いっちゃった演技をさせたら右にでる者がいない三上博。オーバーな表情と過剰な表現力、周りの人間をすっかりおきざりにしてしまう三上ワールドこそ浪貝にピッタリだ。目をひんむいて「俺も死ぬ気で戦うから、おまえらも死ぬ気でみろ!」と吐きすてるように叫んでほしい。なんだかよくわからないけど、とにかく迫力だけはありそう。

 サンボ慎太郎役は東幹久。色が黒くて、瞬きの少ないまんまるのギョロ目で、いかにも何にも考えてなさそうなところが本当にそっくりではないか。テレビでどんなにかっこいい役をやっていても、私は東幹久を見るたびに「あー慎太郎だー」とか「ワンダフルなんかに出ている場合じゃないぞ」と突っ込みを入れたくなってしまう。

 東幹久がウエストポーチをして長渕剛の「とんぼ」を歌いながらフラフラ自転車をこいだり、指で輪ゴムをコネコネしながら「不安なのですね、怖いのですね」とかいってる姿がとにかく見たい。そんでもって東幹久が白竜にボコボコに蹴られまくりながら「あわわわ……」とはいずりまわるシーンなんて、もう最高のシーンだね。ぜひ長回しで撮ってほしい。

 さて、ここまでのキャスティングは問題ないと思うんだけど、ちょっと旬をすぎていて地味目な感じもする。そこでいまどき感を入れるために、菓子パンマン役には窪塚洋介を抜擢だ。窪塚洋介が唐草模様のマントをひるがえし、白いブリーフ姿で登場したら女の子はイチコロよ。

 さあ、みなさんこのキャスティングを使い、想像力をフル回転してドラマ版「無敵のハンディキャップ」を頭のなかで上映してみましょう。