第4回 長渕
 

 “そんなバカな!” とおまえたちは驚くかもしれない。だがなぁ、本当なんだよ。ここにひとつの結果がでちまったんだ。残念ながら……かなりの確率でだぶってる。何がって? バカヤロー! 決まってんだろうが! プロレスファンと長渕ファンがだよ!

 なめとんのか? ファイアー!! せいやっ! せいやっ!

 まぁまぁ、落ち着け。冷静に分析するところから始めようじゃないか。ここにひとつのサンプルとなるべき人物に登場してもらう。彼の名はサンボ慎太郎。カラオケはもちろんのこと、試合前の精神集中、友人への電話のバックグランドミュージックと、彼の長渕使用頻度は実に幅広い。世田谷区主催の作詞コンクールに「いつか見た少年」という長渕の歌詞そのまんまを応募し、入賞してしまったことも、長渕好きが高じたほんの出来心ととらえれば実に微笑ましいではないか。

 少し話がそれたが、早速分析にはいるぞ。長渕とサンボの共通項。それはずばり両者ともに、類い希な自己演出能力を持ち合わせていることにつきる。サンボの演出能力はリングの上でおなじみだが、長渕も負けてはいない。パイナップルみたいな頭で石野真子とつきあい、「家族ゲーム」にでていた頃の長渕は、軟派なおしゃべり青年だった。

 そんな青年も「アー ユー ハングリー? ウイー アー ハングリー! ウイー  アー ロックンロールバンド!」という壮大かつ抽象的すぎる歌詞をひっさげてロックの王道を歩むかにみえたが、「アメリカで生まれた! おれはアメリカで生まれたんだ!」のブルース・スプリングスティーンにスタイルが酷似していることを指摘され、あっさり回避してしまった。その後、逮捕などの艱難辛苦を乗り越えた長渕は、硬派でストイック、そして何よりも仁義を重んじるスタイルを確立したのである。幾度の変遷を経てつかみとった現在のスタイルは、個性無き現在のロックシーンに一石を投じている気がしてならない。

 プロレス界、ロック界ともに無個性の風が吹いている。サンボ、長渕、その比類無きスタイルでもっともっと大暴れするのだ! 浪花節の風よ吹け! 仁義の嵐を呼べ! 演出能力無きものを蹴散らしてくれー!!