第1回 ゴッドファーザー
 

(前ページからつづく)

──今年でプロレスを初めて六年目ですか。
GF あと十年若ければとも思うね。

──四十八歳になったんですよね。でも体力的にも技術的にもまだまだ上昇中に見えるんですが?
GF  いや、体力は三十代前半、プロレスをする前の方があったね。洗濯屋を辞めて、結婚するまでの間かな。技術的には齢を重ねてそれなりになってきたと思う。まぁ、あと十年若ければ、今とは試合スタイルが違って、相手に合わせることができたかもしれない。今は相手に合わせるとやられちゃうね。

──今、注目している選手はいますか?
GF  ウルフかな。ルックスもいいし、座っている姿勢で闘うわりにはスピードがある。ただ技の大振りが多いね。もっと自分の距離を覚えた方がいい。あと、試合をする前からいろいろ悩んで心配ばかりしないで、自信をもって思い切りいった方がいい。

──最近のドッグレッグスに関してはどう思っています?
GF  若い人が欲しいね。みんな年をとってきたから。

──どうして若い人が入ってこないんですかね。
GF  若い障害者は自宅にいることが多いから、親が反対するんじゃないかな。あと、これ以上、障害を増やしたくないと思っている人もいるかもしれない。でも、実際にはプロレスをやって障害が重くなった人は誰もいない。むしろ、動きが早くなった、よくご飯を食べるようになったと、良いことばかりだよ。もちろん、格闘技だから絶対に安全なわけはない。だけど、だいたい何をやったところで100%安全なものなんかないよ。

──ただ、あんまり誰でも出来るようなものになって、敷居が低くなりすぎるのも問題ですよね。
GF  もちろん、見るのとやるのは違うから。他の障害者の発表会でもそれで失敗している。障害者が何かをやればいいという時代は終わっているんじゃないかな。むしろ、その内容のクオリティを問われるようになったというか。オレたちで言えば、トレーニングをしなければ、リングで試合をしても観客に伝わるものはない。だいたい、トレーニングをしていても伝わらない場合があるっていうのに。

──やっぱり、試合を通して伝えたいものがあるわけですよね?
GF  表現したいものは、個々によって違うと思うけどね。オレは、障害者にもいろいろな表現方法があっていいということを伝えたいね。オレの試合で言えば、前座ならばそのすぐ後の試合ににつなげる試合をする。メインだったら、その日全体の流れを締めくくる試合をする。何を伝えたいかは、言葉にすると難しい。

──ドッグレッグスの試合は、観客によって感じ方がまるで違ったりすることがありますよね。
GF  何かを持ち帰って欲しいとは思う。良いにしろ、悪いにしろ。良いというのは、もう一回見に行こうかなと、観客の気持ちを満たしてあげること。悪いというのは、観客の心を不完全燃焼で何かモヤモヤした変な気分にさせること。オレは観客がモヤモヤした気持ちになったとしても、それはそれでいいと思う。

──確かに、心に引っかからない興行というのは、何もやっていないのと同じですからね。では、今の興行スタイルについてはどう思っていますか?
GF  昔と今は違うからね。今のスタイルの方がバランスはとれていると思う。ただ興行スタイルが洗練されてきたからこそ、障害者レスラーたちには自分の試合を大切さを自覚して欲しいと言いたい。

──それはどういう意味ですか?
GF  ただ試合をすればいいって思っているレスラーが目につくんだよな。

──うーん。どうして、そういう風になってしまうんでしょうか?
GF  ボランティアをしているという意識があるんじゃないかな。

──頼まれているからという理由だけで試合に出ている人はいないと思いますけど、強いプロ意識を持って試合に臨んでいるという人は少ないかもしれません。
GF  お金をとっている以上は、それじゃ駄目だよ。試合にもそういう気持ちが出ちゃう。だから、差をつけた方がいいんじゃないか。やる気があまりない人には、一回休んでもらうとか。今のドッグレッグスには、そういう厳しさがあってもいいんじゃないかと思う。

(2000年8月9日、ドッグレッグス事務所にて)

 
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